中小企業も要注意!CO₂排出量の開示義務とは
- pakiraadtime
- 2025年7月21日
- 読了時間: 5分
地球温暖化が加速するなか、企業にも「CO₂をどれだけ出しているか」を開示する責任が求められる時代になりました。でも、「一体どんな企業が対象?」「開示しないとどうなるの?」「中小企業にも関係あるの?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
CO₂排出量の開示が義務付けられる企業とそのルールについて、初めての方でもわかるように解説します。

1. なぜCO₂排出量を開示しないといけないのか?
CO₂(二酸化炭素)などの温室効果ガスは、地球温暖化の主な原因です。国や自治体、国際機関はこれらの排出を減らすために企業や団体の排出量の「見える化(可視化)」を進めています。
数字を開示することで、
企業の環境への取り組みが評価されやすくなる
投資家や取引先が安心して取引できる
国や自治体が排出量全体を把握し、対策を立てられる
といったメリットがあります。
つまり「数字で示す」ことが、企業の信頼性や将来の競争力につながるのです。
2. 開示が「義務」になっている制度は大きく3つ
実は、日本にはCO₂排出量の開示に関するルールが複数存在します。主なものは次の3つです。
① 温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)
環境省が定める制度で、企業や工場などが排出する温室効果ガスの量を国に報告する仕組みです。
<対象>
年間でエネルギー使用量が1,500kℓ(原油換算)以上の事業所
またはCO₂排出量が3,000トン以上の事業所
※従業員の人数は関係ありません
<報告しなかったらどうなる?>
報告命令が出され、それでも従わなければ最大10万円の過料
社名が公表されることもあり、企業イメージに悪影響
現在、既に義務化が始まっており、日本全国で約13,000社がこの制度の対象となっています。
② GX推進法(排出量取引制度・ETS)
経済産業省が主導する制度で、CO₂を「排出枠」として管理・取引する市場メカニズムです。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、経済と環境の両立を目指す取り組みです。
<対象>
年間のCO₂排出量が10万トン以上の企業(単体)
これは主に、製鉄業、化学工場、大規模なエネルギー会社などが該当します。
2026年度から正式にスタートし、まずは約300〜400社が対象になる見込みです。
<この制度で求められること>
排出量の計測・報告
割り当てられた排出枠内におさめる努力
枠を超えたら他社から購入、削減できたら売却も可能
③ サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)
金融庁が支援する「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が作成しているルールです。
目的は、投資家に向けた正確な非財務情報の開示。気候リスクも企業経営の重要指標とされ、財務情報とセットで開示が求められるようになっています。
<対象予定>
2027年度から:東証プライム上場企業で時価総額3兆円超
2028年度から:時価総額1兆円超
2029年度から:時価総額5,000億円超
最終的には、東証プライムの全上場企業(約1,600社)
この制度では、Scope1(自社排出)・Scope2(電力など間接排出)だけでなく、Scope3(サプライチェーン全体の排出)の開示も求められる点が大きな特徴です。
3、なぜ「3つの制度」が併存しているのか?
それぞれの制度には役割・目的・対象者が異なるため、重複して存在しています。
法制度名 | 主な目的 | 対象 | 運用主体 |
地球温暖化対策推進法(温対法) | 国レベルでの温室効果ガス総量の把握・政策設計 | 主に工場・施設単位の中堅企業 | 環境省 |
GX推進法(排出量取引制度) | 大量排出企業の排出抑制と排出枠の市場化(カーボンプライシング) | CO₂10万t以上の大企業 | 経済産業省・GXリーグ |
SSBJ開示基準 | 投資家向けの財務情報と統合された気候開示 | 上場企業(特に東証プライム) | 金融庁・SSBJ(企業会計基準委員会) |
つまり、
「国の温暖化政策(環境省)」
「市場を通じたCO₂削減(経産省)」
「投資家のESG判断のための情報開示(金融庁)」
という別々のアプローチで制度が設けられているのです。
どれに準じればいいのか?
質問 | YESなら対象制度 |
年間CO₂排出量が3,000t以上? またはエネルギー使用が1,500kL以上? | → 温対法(環境省) |
CO₂排出が10万t以上(単体企業で)? | → GX排出量取引制度(経産省) |
東証プライム市場に上場?または予定あり? | → SSBJ開示基準(金融庁) |
上記すべてに該当しないが、取引先に上場企業が多い | → SSBJ開示を間接的に求められる可能性大(Scope3対応) |
将来的には、日本も欧州のように「企業会計(財務)と環境情報を一体で開示」する方針を取っており、3制度は徐々に統合・接続される可能性があります。
例えば、
温対法 → 排出データの整備・正確性担保(SSBJ基準の根拠となる)
GX取引制度 → 将来、SSBJで「カーボンプライス影響」開示に発展する可能性あり
4. 開示しないとどうなる?
温対法で未報告の場合、10万円以下の過料がありますが、これは金額としてはそれほど大きくありません。しかし、企業にとって怖いのは「信用の失墜」です。
社名が公表される
ESG投資の対象外にされる
入札・契約から排除される
取引先から「対応が遅れている」と見なされる
こうしたリスクは、今後ますます大きくなります。
5、中小企業には関係ない話なのか?
「うちは中小企業だから関係ないよ」と思っていませんか?確かに直接的な義務対象になるケースは少ないですが、今後は取引先から「CO₂排出量を教えてください」と言われる機会が確実に増えてきます。これはScope3対応と呼ばれ、上場企業が自社の排出量を開示するために、サプライヤーにも排出量の情報提供を求める流れです。大企業の下請けやパートナー企業にとっては「間接的な義務」が生まれているのです。
対象でなくても、「自主的に排出量を把握・管理しておく」ことが今後の大きなトレンドを見据え、ビジネスの大事な要素となるので注意が必要です。


